保苅 実 記念奨学基金 main page
このメッセージを読む機会を得てくださった皆様へ
弟、保苅実は、新潟高校を卒業した後、一橋大学で学士号と修士号を取得しました。その後、海を渡り、オーストラリア国立大学で博士号を取得、研究対象は、オーストラリア先住民のアボリジニの文化や歴史です。昨年6月頃から、新潟日報に「生命あふれる大地 アボリジニの世界」という連載をもっていたので、ご存知の方もおられるかもしれません。
ちょうどその連載のさなかに、オーストラリアにて悪性リンパ腫、リンパ球の癌という診断を受けました。治療の結果、今年の冬に一度は寛解に達したのですが、大変進行性の強い癌のため、2ヶ月足らずで再発、去る5月10日メルボルンにて永眠いたしました。7月の33歳の誕生日を迎えることができませんでした。
彼が所属していたオーストラリア国立大学が保苅実記念奨学基金を設立してくださいました。基金を寄付で集め、毎年その金利分が奨学金として、世界中の大学院生がアボリジニ研究をするための資金として提供されます。つまり、いただいた寄付金は基金が存続する限り、半永久的に奨学金の原資として役立ちます。その基金となる寄付へのご協力を各方面にお願いしております。彼の研究内容や奨学金については、別資料でご確認ください。
8月下旬には、彼が亡くなるわずか1週間ほど前に書きあげた、彼にとって初めての著作『ラディカル・オーラル・ヒストリー:オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践』が御茶ノ水書房から発刊されます。彼の論文を読むたびに、「なぜ32歳という若さで逝かなければならなかったのか。なぜ私の弟でなければならなかったのか。」と胸がしめつけられますが、彼は家族がそういう言葉を口にするのを何よりも嫌がりました。それは、(じゃあ、僕じゃなければよかったのか。自分とは関係のない他の誰かが癌で死ぬならいいのか。)という利己的な考え方を心から嫌う彼らしさからくるものです。
10ヶ月間癌と闘いながら、彼は常に冷静で前向きで勇敢でした。亡くなる1週間ほど前に、数百人もの友人に向けた最後となったメッセージで、彼はこう書いています。
「これは、僕のわがままなのですが、大好きなみなさんといつでもつながっているという感覚がどれほど、僕を安心させているかわかりません。だから、どうか僕とつながっていてください。祈りでもいい、ただ思い出すだけでもいい、会話の中で登場するのでもいい。どうか僕を孤独にしないでください。人とのつながりのなかで今の僕があり、今の僕がささえられています。」
私達家族は、弟の病気を通じて多くの方と知り合い、彼が亡くなってからも続くつながりを得ました。この奨学基金は、弟本人を知らない方にもご協力をお願いしています。多くの人とつながっていたいと最後まで望んだ保苅実という人間を知っていただくきっかけになればと、切に願っています。そして、そこからまた新たなつながりが生まれることを望んでいます。
「人生は長さではなく深さだ」と言い、充実した人生を送ったと納得してこの世を去った弟です。33年という短く深い彼の人生に、この奨学基金を末永く残すことで「長さ」も与えてやりたいと思っています。どうか寄付のご協力お願いいたします。
2004年7月8日
最愛の弟、実の33回目の誕生日に、アメリカの自宅にて
保苅 由紀
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