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みぃちゃん

40歳のお誕生日おめでとう。

空から見ていてくれたよね、この一年の間に、いろんなことがありました。写真展は、北海道立北方民族博物館の後、立教大学と追手門学院大学でも開催され、今春の北大総合博物館には、7000人以上の人が訪れ、「保苅実の歴史学をどう受けつぐのか」というタイトルの座談会には80人が集まりました。大勢の人が貴方に惹かれて写真展を企画し実施し、そして、さらに多くの人を魅了する場を作ってくれました。貴方とのつながりを感じながら作業に携わった皆さんが、お互いとの出会いを喜ばれたそうですよ。いずれオーストラリアでも、と考えています。図録ももうそろそろ完売に近づいてきました。

そして、5月10日の命日に、"Gurindji Journey: A Japanese Historian in the Outback"をやっと出版できました。英語本の出版だけは絶対に成し遂げなければならないと思ってたから、出来上がった一冊を手にしたときには、感無量。貴方がよく通ったというシドニーのGleebooksと、ANUのCo-op Bookshopで、ローンチをしました。貴方が会場にいないことが哀しいのではなく、貴方が遺してくれたこの一冊で何かが始まるのだ、という心強く前向きな気持ちに満ちたローンチとなりました。二つのローンチ会場で、John Maynard、Tessa Morris-SuzukiとAnn McGrathから次々と貴方のエピソードが飛び出し、大勢の貴方の友人が笑顔で私に「出版してくれてありがとう」と言ってくれて、それが本当に嬉しかった。印税はすべてANUの保苅実記念奨学基金に直接寄付されるように契約しました。貴方を受け入れてくれたグリンジの、アボリジニの人達にお返ししなければ、ね。

シドニーで、貴方の友人Bowhoaと、何日かに分けて一緒に過ごしました。勝手に男性だと思い込んでいて、電話をしたら女性だったので、びっくりして、(やられた!)と思ったわよ。そうだよね、友人ときたら女性に決まってるよね。ぷぷぷ。ホテルのロビーで待ち合わせ、しみじみと私の顔を見て、彼女は涙ぐみました。去年の夏に東京で会った酒井順子さんも涙目になったし、Tessaも会うたびに「似ているねぇ」と微笑んでくれます。

Bowhoaと一緒に食事をして、ローンチで会い、その翌日に一緒にフェリーに乗って、二人で地図を見ながらシドニーの街を嫌というほど歩き回ったのですが、おしゃべりしながら、彼女はいろんなことを思い出して、私たちは大笑いに笑い、その私の笑い声がまた彼女に貴方の何かを思い出させるという繰り返しでした。オーストラリアに来たばかりの貴方が、"I want to change the world."としきりに言っていたことを彼女はとてもよく覚えています。彼女の温かい笑顔と人柄が、慣れない土地で、貴方の慰めと励みになったのだろうと、思ったよ。最後に別れる時、さよならと言って、お互いに背を向けて歩き出したのですが、アメリカに来てから「見送る」ということをしなくなった私が、自然と振り返って彼女の姿を探したら、ちょうど彼女も振り返っていたの。言葉では単純に表現できない、胸がいっぱいになった一瞬でした。そして、お互いに背伸びして笑顔で大きく手を振りながら、別れたのでした。

貴方が編み物をしてたということは知っていたけれど、それが橋本治の影響だというのはFacebook経由で山本啓一さんから聞きました。じつは、去年の冬に私も編み物を20年ぶりに再開して、中毒症状がでています。一つ編み上げたら、アレコレしなきゃ、と思っているのに、その日のうちにすぐ次の作品に取りかかる始末で、なーんにも片付かなくて、貴方関係の作業もひどく滞っています。でも、もしかしたら、貴方が「しばらく好きなことしていいよ~」と言ってくれているのかな、と思ってるわけ。貴方にも冬に一つ帽子を編んであげたけど、今年は手袋にしようかな。楽しみにしててね。

40代を生きたい、と病床で言っていたと聞いています。貴方の40代を、私がどう展開して充実させることができるか、と考えています。まだまだ、貴方のために、やりたいこと、やれること、ありますからね。そうそう、最後に、美保子さんからメッセージ。

「お誕生日おめでとうございますっ、祝40代!!ですね。30代だって未知の世界だったのに、40代。40の保苅さんも変わらずなんだろうなあということだけは確実に想像できますね。ここにいたらなんていうかな。40代になっちゃったよ、なんていいながら、貴女もすぐ追いつくからって、ニヤニヤしながら言うでしょうね。いや、絶対言うっ(笑)」

それじゃ、またね。

由紀