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April 22, 2017 [ Message ]

「ラディカル」文庫化が決定しました。

親愛なる皆様

嬉しいご報告です。

「ラディカル」の文庫化が決まりました。岩波現代文庫より年内刊行の予定です。

先日のメールで、ラディカル増刷(第8刷)に向けての、ご協力を御願いしました。おかげさまで、この呼びかけが広がり、岩波書店から文庫化の打診がありました。担当の渕上皓一朗氏は、大学院時代に、友人の方から、この本を強く勧められ、一読して大きな衝撃を受けたそうです。以来、折りに触れて読み返しているとのこと、このような形で、改めて「ラディカル」に関わることになったことをとても喜んでおられます。

「ラディカル」は旅に合う、とよく聞きます。バイブルのように、あちこち持ち歩いている、とよく聞きます。文庫になることで、「ラディカル」の行動範囲が大きく広がり、読者層もさらに多様化することでしょう。

この10数年の間に「ラディカル」を通じて保苅実と出会った人達が、「ラディカル」の第二の旅立ちを生み出し、支えてくださることを、亡き弟と共に、心より幸せに思います。

どうぞ、このメールを大勢の方に転送し、この朗報を共有していただければと思います。ありがとうございました。

保苅由紀

April 05, 2017 [ Message ]

「ラディカル」増刷(第8刷)についてのご協力のお願い。

親愛なる皆様

FacebookとTwitterを通じて、事情を御存知の方もおられるかと思いますが、「ラディカル」増刷(第8刷)に向けて、皆様のご協力を御願いしたく、メールしています。

弟の著書「ラディカル・オーラル・ヒストリー:オーストラリア・アボリジニの歴史実践」の在庫がなくなってしばらくたちます。「バイブル」のように大事にしてくださってる研究者の方の話をよく耳にしますが、アマゾンでも購入できない状態が続いており、中古が倍額で売られている始末です。ウェブサイトを通じて、私のほうに、どこで購入できるのかと問い合わせがあることもしばしばです。

去年の夏、福岡市美術館で「Doing History!歴史する!」という展示が1か月間行われ地元のアーティストがこのテーマで創作しました。このとき、担当の方が「ラディカル」を販売しようと在庫を探し、その時に御茶の水書房に在庫はなくなったと言われ、それを機会に、私のほうから増刷を依頼しました。御存知の通り、担当者の橋本育氏は退職しています。父親の社長は高齢ということで、新しい方が担当者となり、その方と直接交渉して、500部増刷が決まりました。

増刷が確認できないので、11月にメールで問い合わせを入れたのですが、返事はなく、あまりしつこくするのもどうかと思い、放置してあったのです。そして、最近、ミノルの友人だった方が、ミノルの卒論と修士論を閲覧するのに、私の許可が必要だということで連絡があり、そのやり取りの中で、増刷を確認する方法はないかと相談したところ、直接この担当者に問い合わせてくださり、そこで、増刷開始ぎりぎりになって、注文がこないので、中止をかけた、ということらしい、と連絡がきました。

私の方に一切の連絡もなく、増刷を中止したこと、11月に問い合わせしているにも関わらず、返事がないこと等、その不誠実な対応に、不快感を隠せません。担当者にメールをだしても、また無視される不安があったので、御茶の水書房の問い合わせ窓口のほうに、数日前に、改めて抗議のメールを出したのですが、まだ返事はありません。

前置きが長くなりましたが、お願いというのは、購入希望しているものの、本屋等で在庫が見つからず、困っている方(お知り合いでも)から、直接、御茶の水書房(03-5684-0751)あてに問い合わせをいれていただきたいのです。

また、大学関係者の方、関連分野で教鞭をとってる方からも、是非、これから学問の道にすすむ若い研究者達と、この本の出会いが、どんな可能性を引き出せるのか等、先方に説いていただければ、またさらに増刷にむけて、大きな動きと力を生み出せるのではないかと思っています。

御茶の水書房は、ゼミでの輪読とか、シンポジウムのようなイベントに合わせた、まとまった注文がこないから、増刷しなかった、というようなことを言ってるようですが、私にしてみれば、在庫がないから、注文できない状態が続いていると思うわけです。実際、福岡市美術館の「歴史する!」展示会においても、一橋大学で開催された日本オーラルヒストリー学会による「保苅実シンポジウム」においても、在庫がなかったため、「ラディカル」の販売はかないませんでした。ただ、私のような素人が何をいっても、身内がわめいてるだけにしか見えないので、皆様や、お知り合いの中から一人でも多くの方に、直接出版社のほうに、訴えていただけると、説得力があると信じます。

この本は、できるだけ多くの方に読んでもらいたいと、弟は一切印税を放棄して、価格を抑えたといういきさつがあります。その効果あってか、この本は歴史学・文化人類学の研究者を超えて、幅広い層に読まれているのは、皆さん御存知の通りです。先日は、鹿児島で開催された西日本宗教学会で「ギャップ越しのコミュニケーション」という概念が紹介されていたことを知り、驚くと共に、弟の研究が彼の死後13年たっても、色あせず各地で爆発を続けてることに、言葉では表現できないような誇りと喜びを感じました。

お忙しいところ、大変恐縮ですが、御一考いただけると幸いです。大勢の方の協力があることを、弟、保苅実と共に、祈りつつ。

このメールは、どうぞ自由にどこまでも転送なさってくださいませ。

保苅由紀

April 12, 2010 [ Message ]

To R.T.

Dear R.T.

I was listening to "Forever Young" and got really emotional.

As I watched my dad interacting with my daughter, I could not help but thinking how Mino would have been around with my children. He was thinking to spend some time in the US, close to me and them, around the Xmas time in 2003 if he did not get sick or even planned to seek for a position in the US.

I was away from my parents and Japan for a while after his passing. This trip was good and I am glad that I did it, but at the same time, it was emotionally hard for me to breathe the air there and revisit what had happened to him.

Many people imagine what he would have done if he had lived longer, but it is true that he has done a lot for his short life and I am certain he was fulfilled as he told me. I just have to keep thinking about what I can do for him and his work. I have one more thing to do....publish his book in English. I am working on it.

Yuki

May 10, 2004 [ Message ]

Message from Minoru Hokari

Dear Friends,

With my lots of tears, I have to let you know that my dearest brother, Minoru Hokari, passed away at 12:45 AM (Melbourne time) on May 10th. As he wished always, he didn't lose his consciousness almost all the way till the end. For the last nine months, he has been very brave, calm and positive, and we are very proud of him. We will have a memorial service here in Melbourne on Wednesday morning, cremate his body and take his ashes back home in Japan.

About a few days before he died, he mentioned to me that he might want me to translate his message to you into English. At that moment, he did not have strength to do it. Then, he got deteriorated quickly and he never handed his laptop to me. But his family decided to convey it to you. As he promised you in a previous mail, he wrote to you again.

He could have translated with different wording, but I tried my best. From his family, we appreciate all your supports for the last nine months. I have so much to tell you, but I can't right now. Maybe some day, I will write to you again.

Best regards,

Yuki, Mino's sister


******Mino's last message

How are you, everyone? It's me, Mino, again. Yes, I am still surviving. At the hospital where I had gone through chemotherapy, my doctor told me that I would lose my consciousness in a few weeks, but my mind is still clear and I am myself just like I had been. These days I have to use a wheelchair even when going to bathroom. I don't have much strength so that I rarely answer the phone and don't see visitors either. I am totally exhausted by just speaking. When I do meditation, I feel rested.

Would you please do me a favor? Under this difficult situation, I don't accept almost all the visitors and phone calls. Simply, I cannot take it physically. Although I know this is my selfish wish, I am always grateful as I feel connected with all of you, my dear friends. So, please stay connected with me. Please do not make me feel lonely. I am here with you and I feel so much support from you. This is nothing to do with the facts that I cannot either answer the phone or see you because of the luck of strength. Within the loneliness, I stay connected with all of you, which has been and is deeply supporting me.

I have a great news for you. It seems that I can soon publish my book. From Ochanomizushobo, my maiden book will be published in June or July. If you are interested in Aborigines or oral history, please take a look at it. I am amazed myself that I finished it at the terminally ill stage, but it was made possible with all the kind supports from my friends. The possible title will be "Radical Oral History - Australian Aborigines historical practice" Although it might take longer, I am planning to publish an English version.

Well, I may be able to write to you again. Until then, why don't we live every minute and every second of our precious lives.

From Melbourne

Minoru Hokari

===================The following part is written in Japanese.===================


親愛なる皆様

たくさんの涙を流しつつ、最愛の弟、保苅実が5月10日の午前12時45分に息をひきとったことをお知らせします。彼自身が常に望んだように、本当にぎりぎりまで意識はしっかりとしていました。この9ヶ月間、彼はとても勇敢で、冷静で、前向きであり、私達家族は彼をとても誇りに思っています。水曜日にメルボルンにて簡単なお葬式をした後、お骨と灰をもう一つの故郷である日本に持ち帰り、そこでまたお葬式をすることになります。

彼が亡くなる数日前、弟は私に貴方達へのメッセージを英語に直すことを頼むかもしれないと言いました。そのときには、もう英語に翻訳する体力が残っていなかったからです。が、その後急速に状態が悪くなり、私が彼のラップトップを受け取ることはありませんでした。私達家族は、そのメッセージを貴方達にお送りしようと決めました。彼が前のメールで約束したように、彼はもう一度メッセージを書いたのです。

家族代表として、9ヶ月間の闘病生活の間のあなた方の暖かい支援に心から感謝申し上げます。もっとたくさんお伝えしたいことがあるのですが、今はとてもできそうにありません。またいつか、ご連絡させていただくかもしれません。そのときは、どうぞよろしくお願いします。

姉、由紀


*******実からの最後のメッセージ

みなさん、お元気ですか、保苅です。まだ生きてますよ。以前の病院で、2-3週間で意識がなくなるといわれて、ホスピスに移ったのですが、それから一月以上、体力的にはずいぶん衰えましたが、僕の意識は健在で、いままでと同様のほかりをやっています。何せトイレに行くのも車椅子という状態で、体力はひどく細くなって、訪問者はおろか、電話に出るのもめったにない生活です。声を出すだけで疲労するという感じ。身体が休まるときは静かに瞑想しています。

みなさんにお願いがあります。こういう状況ですので、お電話や訪問のお問い合わせは基本的にすべてお断りしています。単純に体力が持たないのです。でも、これは僕のわがままなのですが、それでも大好きなみなさんといつでもつながっているという感覚がどれほど、僕を安心させているかわかりません。だから、どうか僕とつながっていてください。祈りでもいい、ただ思い出すだけでもいい、会話の中で登場するのでもいい。どうか僕を孤独にしないでください。人とのつながりのなかでいまの僕があり、今の僕が支えられています。それは、体力的にみなさんと会えないとか、電話に出れないということとは全く関係ないのです。孤独のなかで、人とつながる。それがいまの僕を深く支えています。

ところでうれしいお知らせ。何とか本が出版できそうです。お茶の水書房から6-7月に僕の処女作が出版されますので、アボリジニやオーラル・ヒストリーに関心のある方はぜひ手にとってみてください。この末期がん状態でよく作ったものだと思いますが、周囲の友人たちが時間を惜しんで協力してくれたおかげなんです。仮題は『ラディカル・オーラル・ヒストリーーオーストラリア先住民アボリジニの歴史実践』です。よろしく!英語版も、時間がかかるかもしれませんが必ず出版したいと思っています。

それでは、また何かかけるかもしれません。そのときまで、お互いに一分、一秒を大切に生きていきましょう。

メルボルンより

保苅実。

March 29, 2004 [ Message ]

message from Minoru Hokari

Dearest friends,

Very sad news I have to tell you. Since my cancer is exceptionally aggressive, doctors concluded it would be impossible to reach remission again. Accordingly, there is no possibility of bone marrow transplant. In other words, from Western modern medical point of view, there is no hope of cure of my disease. I personally do not believe the dead-end of chemotherapy is the real dead-end. I practise possible alternative treatments to make my life as long as possible, and more importantly, as more meaningful and profound as ever. I will move from the current hospital to a new hospice in Melbourne. In order not to waste my precious time, I decided not to go back to Japan at this stage. For the same reason, please allow me not to see many visitors especially during the critical period (next few months).

Treatments I have been through were really tough, but I think it was worth doin g it. I have no doubt I grew up mentally and spiritually much more than ever before. It was truly amazing experience I have gone through. I was also very happy to receive hundreds of mails from many of my friends saying they were also encouraged by my messages. We are connected and in two-way relationship, aren't we? There is nothing like meaningless life, either. Experiencing interesting but depressing hospital life, many kinds of pain and suffer and deep conversation with my body, as well as receiving your generous support and love from all over the world, I cannot believe how fortunate and lucky person I am!

This is not the last mail from me. I will survive, no worries.

With full of love and thanks,

mino

===================The following part is written in Japanese.===================


親愛なるみなさん、

その後、お元気でしょうか。今回は、前回以上に残念なお知らせをしなければなりません。癌の進行が医者も驚くほど速く、化学療法で再寛解を迎えることが絶望的となり、それにともなって骨髄移植の可能性も絶たれました。近代医学の立場に立つと、この時点で、完治の可能性はなくなったことになります。とはいえ、化学療法(近代医学)だけが「治療」ではないですので、延命と鎮痛のための多様な治療を続けながら、これまで以上に質の高い生活をできるだけ長く送りたいと思っています。具体的にはホスピスでの生活になります。また、さらに貴重になった時間と体力を移動で無駄にしないために、今後もオーストラリアで治療をつづけます。おなじ理由からなのですが、生命が危ぶまれるここ数ヶ月のあいだは、お見舞いの方々をお断りするかもしれません。申し訳ありません。

これまでの治療は本当につらいものでしたが、それをくぐりり抜けてきたことで、自分が今までより何倍もタフになった、精神的に成長したように感じています。そして、多くの方が、僕のメールに逆に勇気づけられた、とおっしゃってくださって、とってもうれしく感じています。やはり関係は相互的であったほうがいいじゃないですか。そして、人生に無駄ってないんですよね。入院生活、痛みや苦しみ、身体との深い対話、家族や世界中の友人たちからのサポートなどすべてが、本当にかけがいのない経験になっています。信じてもらえないかもしれないけど、僕ってなんて幸福なんだろう、としょっちゅう感じているんですよ、マジで。ご心配なく、この危機的状況にあっても、僕は、僕らしく生きています。

これが最後のメールではありません。生き延びますので。

感謝の気持ちをこめて、保苅実より

March 02, 2004 [ Message ]

message from Minoru Hokari

Dearest Friends,

I must to tell you a bad news this time. It is unfortunate that the cancer relapsed rather quickly. I was warned by the doctor that if it happen, it would be quick, but I expected at least I could manage to visit Japan. Well, let's face the reality and go through it. I started my treatment again in Melbourne. Situation is tougher than before but nevertheless there is a hope of cure. I will continue training myself to become a more strong and smiley person. I hope I am not asking too much for your continuous support of me... I am here in this beautiful world because of your support. You are always with me, and I am always with you.

much love,

mino

===================The following part is written in Japanese.===================

みなさん、お元気ですか?今回は残念なお知らせです。がんが再発しました。来るなら早いとは言われていたのですが、日本を訪問する暇もなかったことが残念です。まぁ、しょうがない。進行のきわめて速いがんで、なかなか思うようにいきません。状況はさらに厳しくなりましたが、同時に希望もまだまだ十分あるので、とにかく治療を続けます。さらにタフで、笑顔の絶えない自分を目指して精進してゆきます。詩人のようにありたいですね。ひきつづき、みなさんのご支援をいただけるでしょうか。大切なみなさんのおかげで僕がいます。僕とともに大切なみなさんがいます。また、メールします。

メルボルンより ほかりみのる

January 06, 2004 [ Message ]

happy new year from mino hokari

Happy New Year Everyone!

I am glad and proud to tell you that I managed to survive through 2003, and am still alive and fine in 2004! I sincerely thank all of you for your generous support, love, prayer and encouragement, which meant a lot, a lot, a lot to me.

As you may heard from yuki, the last cycle of chemotherapy was over. I am still in danger of infection, but my everyday life is quite peaceful - reading books, listening to the music, meditating, eating and sleeping. My next challenge will be going to a cinema or reading a book at a cafe. My body weight, which at one stage I lost about 10kg, is now nearly back to normal. I plan to visit Japan in March, and (finally!) come back to Canberra in April.

It is true that I have to live with a risk of a relapse of cancer for next few years. But so what?! As I have always been so, I will do only what I want to do - a few books I want to publish, a few places I want to visit, etc. It is also true that I learnt so much from this sickness. I believe it is my new 'task' to make the best of this experience. It would be wonderful if we share and learn more from each other's life experiences.

Wish all of you and the world a better year!

Mino

===================The following part is written in Japanese.===================

あけましておめでとうございます。
昨年は本当に皆様のご支援に支えられて、この新しい年を生きて迎えることができました。心から御礼申し上げます。

化学療法は最後のサイクルが順調に進んでいます。まだ血液検査は続いていますし、感染症の危険から完全に脱したわけではありませんが、全体としては体力回復のための養生が始まったという感じです。読書や音楽鑑賞は毎日のようにできていますので、決して退屈した日々ではありません(最近は三島由紀夫とフランク・ハーバート、そしてグレン・グールドとチャールズ・ミンガスに凝ってます)。が、映画を見たり喫茶店で本を読んだりするまでにはもうしばらくかかりそうです。一時は10kgも落ちた体重もずいぶん回復してきました。3月には日本に帰国したいと考えていますが、これは体力の回復しだいです。

これから数年は再発の可能性と隣り合わせの生活となりますが、「それがどうした?!」とでも言うしかないですね。本の執筆をはじめ、やりたいことを少しずつはじめてゆきたいと思っています。病から本当に多くのことを学びました。それが今後の人生でどのように生かせるかが、大きな課題であるように感じています。今年もまた、皆さんと学びあえる関係でいれたらどんなにすばらしいかと思います。どうぞ末永くよろしくお願いいたします。

2004年が、われわれ全員と世界にとってよい年でありますように。

保苅実

December 30, 2003 [ Message ]

Minoru Hokari - chemo is over

Dear Friends,

Mino is done with the very last cycle of chemotherapy and got out of hospital before Christmas. It seems that his immune system has been heavily destroyed by chemo and we observe the more chemo goes, the longer it takes for white blood cell to come back. So, he has be careful for not getting an infection for the next 2 weeks or so. After that, he will be on recovery for coming many months.

I just want to drop a note to thank you for supporting him and his family since he became ill. Please keep praying for his complete recovery and I really appreciate it.

Best regards,

Yuki Hokari

===================The following part is written in Japanese.===================

親愛なる皆様

弟は化学療法の最後のサイクルを終え、クリスマス前に退院しました。半年に渡った化学療法のせいで、彼の免疫機能はかなりダメージを受けているようで、治療が続けば続くほど、白血球の数が回復するのに時間がかかっています。というわけで、この最後のサイクルにおいては、これから2週間は感染症との闘いになるかと思われます。そして、その後は長い月日をかけた回復・療養期になります。

さて、実は、弟の書いたエッセイをWeb上にまとめました。これは、ある新聞に連載されたものであり、著作権等の問題が生じる可能性があるので、校正の入る前の原原稿を使いました。お時間の或る時にでもご覧になってください。感想を送ってくださると、本人にとって大きな励みになるかと思います。

弟の発病以来、彼と私達家族を支えてくださって心より感謝いたします。どうか彼の完全なる回復と治癒を引き続き祈ってください。どうかお願いします。

保苅 由紀

November 14, 2003 [ Message ]

message from minoru hokari

Dearest friends,

I'm finally writing a message from my own email account (not via my sister). At the end of forth cycle of chemotherapy, I had CT scan, PET scan and bone marrow aspiration to see how effective our cancer treatment was. The result was fantastic! I'm very happy to tell you that my cancer is now in remission. However, doctor said there was always a possibility of micro cancer being still alive and not detected by the recent technology. In conclusion, even though it may not be necessary, we agreed to have two more cycles to make sure of doing our best for the future.

I will be under chemotherapy for six more weeks until the end of this year. I don't hesitate to repeat here how tough and horrible chemotherapy is. I hate it! It is physically and mentally so challenging that I feel my 'life (power)'is threatened. For this very reason, I sincerely thank for your generous support and encouragement. I need your love and prayer in order to go through this difficult time - in order to survive. Please be with me for another six weeks, and the worst year of my life will be over. I cannot wait to see you at cafe, restaurant, museum, library, office, or on the street somtime next year!

Be brave, be cool, and be beautiful.

With many many thanks,

mino

===================The following part is written in Japanese.===================

皆さんこんにちは、オーストラリアから保苅です。

今回は姉の代筆ではなく、僕自身のメールアドレスから発信しています。化学療法の第4サイクルが終わったあと、検査等でしばらく休息期となり、その間に体力も回復し、本を読んだり外を散歩したりできるようになりました。さて先日主治医とのミーティングがあり、PETスキャン等の最新の検査の結果、僕の癌が寛解をむかえたとの朗報を受けました。これは、とりあえず癌が治ったことを意味します。とはいえ、検査をすり抜けた小さな癌細胞がないという保証がないために、あと2サイクル化学療法を続けることになります。辛いですが、年末まであと6週間、最後の仕上げになりそうです。

あらためて言うのもなんですが、化学療法というのは本当に辛くひどい治療法です。まったく嫌になります。気力体力、ひいては生命力がぎりぎりのところで試されるようです。それだけに皆さんの応援にどれほど助けられてきたか知れません。危機を乗り切るために、生き延びるために、皆さんのご支援を必要としています。あと少しだけ、どうか僕を見守ってください。心から、どうぞよろしくお願いします。この最悪の年を乗り切ったら、また皆さんにお会いする日を楽しみにしています。

勇敢で冷静、そして美しくありたいと感じています。

保苅実

November 07, 2003 [ Message ]

Minoru Hokari - my third visit to Australia

Dear Everyone,

To tell the truth, it's been a very stressful month. Right after Mino was done with 4 cycles of chemotherapy, he got an infection with very high fever for several days. He had to go back to the hospital for about a week. Doctors found a bug in his system and he was on antibiotics. He got discharged and is getting better. Since he was hospitalized so long, his leg mustle got weaken, but he started taking a very short walk every day. 10 minutes walk mekes him very exhausted, but his spirit is always up.

I will be off to Melbourne again from tomorrow and stay there for only one week this time. Even though it doesn't make much sense to fly all the way to Australia for 20 hour flight, 2 weeks is a bit too much for my son and husband. (My son had horrible days at his school and my husband missed two credit card payments!! But I did not say anything since I told him before I left "Don't kill my son and don't burn down the house, that's all I want." and he kept the promise!!)

While I am there, we will have a meeting with his doctor and find out how well chemo has been working and what we will do next.

When I am away from him, I feel really close to you guys. I really appreciate your warm words and encouragements. I will contact you again when I get back. Please keep praying for him with me.

Best regards,

Yuki Hokari

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親愛なる皆様

正直に言えば、ストレスいっぱいの1ヶ月間でした。弟が4回の化学療法を終えてすぐに、感染症にかかり、高熱が何日も続きました。すぐに病院に戻り、医者が彼の体の中に細菌を見つけ、抗生物質を投与し、熱がやっとさがって1週間ほどで退院しました。今は、食欲もあり回復に向かっています。病院での生活が予定よりも長くなったため、足の筋肉が弱ってしまいましたが、今は毎日少しずつ外に散歩に出ています。わずか10分の散歩でもマラソンをしたように疲れるようですが、彼の精神は常に前向きです。

私は明日からまたメルボルンに向かいます。今回は1週間だけです。20時間もかけてアメリカから一番遠い国、オーストラリアに行くのに、1週間しか滞在しないのは体力気力共に大変なのですが、2週間家を空けるのは、息子にとっても夫にとっても長すぎることがわかったからです。(息子は保育園で散々な日々を過ごし、夫はクレジットカードの支払いを二つも忘れました。私がそれについて何も言わなかったのは、出発前に、「海瑠を死なせないことと、家を焼かないこと、それだけ守ってくれればいいから。」と言い残したからです。家も全焼せず、海瑠も元気でしたので、いいとしました。)

私がオーストラリアに滞在している間に、弟の主治医と面談があり、そこで、化学療法がどのくらい効いているか、これからどういう予定となるかを話し合うことになっています。

弟のそばにいない間、オーストラリアから一番遠い国にいるとき、私はとても貴方達という存在を身近に感じます。温かい励ましの言葉をいつもどうもありがとうございます。戻ったら、またご連絡します。どうか私と一緒に、弟のために祈り続けてください。

それでは。

保苅 由紀

October 06, 2003 [ Message ]

Minoru Hokari - ask for your understanding

Dear Everyone,

I came back from Melbourne about a week ago and am gradually recovering from the trip. When I arrived there, he was at the hospital for the third cycle of chemotherapy. He got discharged a few days later and came home. For the first 5 days or so, he didn't feel well at all from nausea, tiredness, and minor fever. Around that time, he was lying in his bed all day long except a meal time. When he became feeling better, he had to go back to the chemo for the 4th cycle.

This is a typical reaction and routine for his treatment. When he is doing well, chemo knocks him down as well as cancer. He gets week, then better, then goes back for chemo.

Since many of you asked me or him when you can visit him, I have to tell you more about his treatment. As I mentioned before, chemo decreases his white blood cell count which controls the immunization system. For the normal people, it ranges from 4 to 11. His went down all the way to 0.02. So, I am not exaggerating how dangerous it is for him to get an infection. He gets discharged and becomes outpatient because the hospital has numerous germs. They want chemo patient away from the hospital.

We people are covered with germs. Any skin touch or cough or sneeze could spread the numerous germs. But healthy people don't get sick since we have normal white blood cell count. Believe or not, we sanitize his plates and silverware with hot boiling water each time he uses and use different sponge to clean his plates. He constantly sanitizes his hands and brushes his teeth. He cannot eat fresh vegetables like salad, and we cannot use a knife to cut fruits for him. Other than the fully cooked foods, he can eat only canned fruits or banana or oranges, which he can peel it by himself.

He gets really nervous when we come back from outside. He did not even let our parents to come to his room or living room when they arrived from Japan. They had to change all the clothes, wash hands and rinse their mouths before seeing him. When he goes to the hospital for blood work or any other procedure, he wears a mask and gloves and when we come back home, he changes his clothes and takes shower. He never goes outside except his trip to the hospital.

In general, he cannot really accept any visitors while he is on chemo. We feel really bad since we know that all of you want to see him and encourage him. But I beg you to understand the situation. He feels really bad to turn down your offer for a visit. Please do not pressure him.

Once his chemo is over, the infection threat will be gone, so that he will be able to see you. Please be patient. We will let you know when he is ready.

Best regards,

Yuki

===================The following part is written in Japanese.===================


親愛なる皆様

私は1週間ほど前にメルボルンから戻り、時差ぼけから回復しつつあります。私が渡豪した時、弟は3回目の化学療法のため入院中でしたが、数日後に退院となり帰宅しました。それから5日間は、吐き気、だるさと微熱のため、気分がすぐれず、食事の時間を除いては、一日中ベッドに横になっていました。そして、ようやく気分がよくなったのですが、私がメルボルンを発ってから数日後に4回目の化学療法のため、また入院しました。

これが化学療法の典型的なパターンです。彼の気分が良い時に、キーモで癌を退治するため、彼は具合が悪くなります。そして、それから回復すると、また次のキーモを始めるのです。

皆さんの多くが私や弟本人に、いつお見舞いにいけるかと聞いてくださるので、少し彼の状況について詳しく説明しなければなりません。前にもお知らせしたように、キーモは免疫をつかさどる白血球の数を著しく減少させます。普通の人ならば、その値は4から11の間なのですが、彼の白血球は0.02まで低下します。感染症のリスクを、私は大げさに強調しているわけではないのです。彼が退院して、通院する時期があるのは、このためです。病院には多くの病原菌が存在し、医者達はキーモの患者を病院から遠ざけておきたいということなのです。

私達の体は病原菌にまみれています。いかなる接触も咳もくしゃみも、その病原菌を回りに撒き散らすのです。でも、健康体であれば白血球が病気になることを防いでくれます。実際、私達は、弟のつかう食器を食事のたびに熱湯消毒しますし、彼の食器は別のスポンジを使って洗います。彼はしょっちゅう手を洗い、歯を磨きます。生野菜は食べてはいけないし、ナイフを使って切った果物を食べさせることもできません。火を通したもの以外で彼が食べるのは、缶詰の果物とバナナやオレンジなど、彼が手でむける果物程度です。市販の惣菜もまず食べることはありません。

面倒を見ている私達が外出から戻ってくると、彼はとても神経質になります。私達の両親が日本から戻ってきた時、着換えをして手を洗いうがいをした後でなければ、弟は彼らを彼の部屋にも居間にもあげようとはしませんでした。彼自身が病院に血液検査で出向く際は、マスクをし手袋をして出かけ、戻ってくると、全ての衣類を換えてシャワーを浴びます。病院と家との往復以外に、弟が外出することは一切ありません。

つまり、化学療法中は、彼はお見舞いを受けることができません。皆さんが彼に会って励ましたいという気持ちがあるのを十分知っているだけに、とても心苦しいのですが、どうかご理解ください。彼自身、お見舞いを断るのはとてもつらいと言ってます。どうか、彼にプレッシャーをかけないでください。

化学療法が終われば、感染症のリスクはなくなります。そしたら、お見舞いを受けることができます。そのときがきたら、ご連絡しますので、それまでどうかお待ちくださいませ。

由紀

September 12, 2003 [ Message ]

Re: Minoru Hokari - News to share

Dear Everyone,

I will leave here on Sunday, 14th and stay in Melbourne from 16th till 29th. I assure you that you all will hear from Mino himself soon, so please be patient. Before I leave, I want to share a great news with you. As I talked to my brother on the phone last night, he told me that my bone marrow type matches with his!!! This means that even if chemotherapy does not work, we still have a backup, that is, bone marrow transplant. His doctor told us that it was only 25% chance for a match. They will do more tests on me when I am there. Since he got sick, somehow everything works out perfectly like no missing puzzle piece, which is just like a miracle. More than ever, I am so convinced that he will be 100% cured. He has to, don't you agree??

With lots of love,

Yuki

===================The following part is written in Japanese.===================

親愛なる皆様

私は14日(日)にアメリカを発ち、またメルボルンに向かいます。今回は16日から29日までの滞在です。皆さんは、もうすぐ弟本人から直接メールでの連絡を受けることができることを約束しますので、もう少し辛抱して待っててください。2回目の渡豪前に、一つ素晴らしいニュースを皆さんにお伝えしたくて、PCに向かっています。昨日の電話で、私の骨髄タイプが弟のものと一致したとの検査結果が出たことを知りました。これはつまり、万が一chemotherapyが効かなかったとしても、骨髄移植というバックアップがあるということです。主治医からは、一致する可能性はわずか 25%だといわれていたのです。今回の私の渡豪中に更なるテストをするそうです。彼が病気になってから、どういうわけか、パズルの全てのピースがぴたりとはまる、という奇跡ばかりが起こります。今まで以上に、私は彼が100%治癒することを確信しています。そうでしょう?治ってもらわなければ!! そう思いませんか?

それでは、また。

たくさんの愛をこめて、姉・由紀

August 31, 2003 [ Message ]

Mino's message 2

Dear Everyone,

Please find the attachment, the second message from Mino. I left the US on 14th and got trapped in the airport when the blackout happened. I waited for 5 hours at the airport and finally took off 3 hours later, but missed a connecting flight from LA to Australia. I had to stay in LA for one night and caught a flight 24 hours later. I stayed with Mino for about 10 days, my parents arrived on 22nd, moved him to Melbourne on 25th and got back here in the US on 27th. I am heavily jet lagged. As a result, I am sorry to pass his message late.

Mino is doing really well. Not much side effects although he started losing his hair when we exactly expected it to happen. Maybe it was because I was with him during the recovery stage of a 3-week chemotherapy cycle, he had a good appetite and enjoyed my cooking. We talked a lot, laughed a lot, even argued, and allowed ourselves to spend money freely by making an excuse "Well, I (you)'ve got cancer, what a heck."

It is really encouraging for him to receive letters and phone calls, but it is true that he gets tired very easily by talking on the phone a lot. As the treatment goes, he might not be able to answer the phone so often, but please understand the situation. Even you can get to talk to him, try not to keep him on the phone too long. He has to save his energy to eat good amount of meals, take a shower every day to avoid infections and move around to use his weakened muscles.

I also met his doctor at the hospital in Melbourne. All the questions that we had were answered very well and I felt really good after the meeting.

Our parents are with him now until the mid September when I will go back there. We are amazed there are so many friends who are supporting him and us. Again, thank you very much for your support.

Yuki, Mino's sister


==== Mino's message

Dearest friends,

I again asked my sister to send this mail to you all. I've received unbelievable number of very warm and encouraging messages from all over the world. I really don't know how to express my thanks to you, but I must say I was moved to tears realising how much my life has been supported and cared by many many friends. My sincere apologies for not being able to write to you individually.

By the time you receive this message, I should be in Melbourne starting a serious cancer treatment (chemotherapy). As you probably know, it is expected that the more treatment progresses, the sicker and weaker I will be ? in my case, at least for next six months. Although it's tough, I have no doubt that this will help me to grow - to become a person who experiences and understands toughness of cancer treatment. I've already been through a major operation and radiotherapy. Chemotherapy will be the toughest challenge to win the grand slam of cancer treatments?!

A friend of mine called me "King Cockroach" ? impossible to kill Mino! I personally have a little more romantic vision that caterpillar-Mino enters a cocoon to come out as butterfly-Mino. Or, being inspired by Indigenous Australian tradition, I take this opportunity as my initiation ceremony. Ceremony cannot be hold by myself. Reading your encouraging messages, feeling your warmest support and love, I am now ready to enter the cocoon. Furthermore, I really hope our relationship is not just one-way traffic. I will send you "something important" for all of us from the cocoon ? it may not be visible, but I will. I never felt so strongly that it is such a simple truth that human cannot exist without connectedness, and the world (universe?) is connected. It was worth being sick for me even just to reach this deep realisation.

Since I will be extremely vulnerable to infection during this period, please forgive me that I may not be able to accept your kind offer of visiting me. However, let me repeat here hundred times that how much I am moved and encouraged by your web of love. I cannot wait to see you when a cockroach-powered butterfly coming into the world. Till then, let us make our lives move on to the future!

Lots of love,

Mino (Minoru Hokari)

===================The following part is written in Japanese.===================

親愛なる皆様

弟からの2回目のメッセージを添付しましたのでご覧ください。私は14日に出発したのですが、あの停電に巻き込まれ、空港で 5時間待った後に、3時間遅れのLA行きの飛行機でとんだのですが、LAからの乗り継ぎ便に乗り遅れ、LAで一泊し、24時間遅れでオーストラリアに向かいました。10日間ほど弟と過ごしましたが、その間、22日に両親が到着、25日にアデレードからメルボルンに引越し、私自身は27日にアメリカに戻りました。かなりひどい時差ぼけで、その結果、皆様へのご報告が遅れたこと、お詫びします。

弟は元気にしています。副作用もそれほどありませんが、言われていた通りのタイミングで髪が抜け始めました。おそらく、3週間で1サイクルの化学療法の、回復期だったせいかとは思いますが、食欲もあり、私の料理を大変喜んでくれました。たくさんおしゃべりし、たくさん笑って、議論までしましたし、「癌だからいいよ。」と必要なモノを買うのに笑いながら散財しました。

弟は、皆様からの手紙や電話にとても力づけられていますが、電話で長く話すことでかなり疲れるというのは事実です。治療が進むにつれ、おそらくそう頻繁に電話にでることもできなくなるでしょう。どうかご理解くださいませ。また、うまく電話で話せたとしても、どうかできるだけお話は短めにしてください。たくさん食べ、感染症を防ぐために毎日シャワーを浴び、弱った筋肉を鍛えるために歩き回るための体力を温存しなければならないからです。

メルボルンの病院で、担当医とも会いましたが、私達がぶつけた全ての質問に丁寧に答えていただき、大変爽快な後味のするミーティングでした。先生に会っただけで、もう治ってしまったような錯覚が起きたほどです。

9月半ばに私がまた渡豪するまで、両親が弟に付き添います。私達家族は、あまりにも多くの人が彼のことを支えてくれている事実に驚いている次第です。本当にどうもありがとうございます。

姉・由紀

*****

皆様、オーストラリアから保苅です。再び、姉に代筆を依頼してこのメールを書いています。信じられないくらい大勢の方からお見舞いのメール、カード、お便り、そして激励とご支援をいただき、自分が多くの方々の支えの中で生きていることに深く感動し、そして感謝の気持ちでいっぱいです。本来なら、お一人おひとりにお礼のお便りをつづらなければならないところですが、このような一括メールなることをどうかお赦しください。

このメールが皆様に届く頃には、僕はアデレードの緊急入院先を出て、メルボルンで本格的な化学療法が始まっているはずです。ご存知の方も多いと思いますが、化学療法というのは治療が進めば進むほど副作用で身体が弱っていきます。それがこれから約半年は続きます。とはいえ「癌治療の辛さを経験してわかる人間になること」は、その長さ如何を問わず今後の僕の人生にとって決してマイナスではないと思っています。既に腫瘍摘出手術と放射線療法を経ましたので、癌治療三冠獲得(!)にむけてこれからが正念場です。友人に「おまえはKing Cockroach(ゴキブリの王様)だから大丈夫」と言われました。どんなに殺したくても殺せない、という意味らしいです。僕自身はといえばもう少しロマンチックで、イモムシの自分がまゆに入り、そして蝶になって生まれ変わる、というビジョンを持っています。あるいは、これまで学んできたアボリジニの人々の教えにそって、これを僕の通過儀礼という風にも考えています。儀式は一人では不可能です。皆様からの暖かいメッセージを読みながら、皆さんの応援と支えがあるから自分はまゆに入れるのだと心から実感しました。そしてこれが一方的な関係ではないことを祈るばかりです。まゆの中から、僕も皆様に「何か大切なもの」を、それが目に見えないものであったとしても送り続けるつもりです。人は繋がっているし、世界は繋がっているということを今ほど深く確信したことはないように思います。それだけでも癌になった甲斐(?)があるというものです。

「お見舞いに伺いたい」とおっしゃってくださる方も多数いて、本当に本当に嬉しく存じますが、しばらく感染症が最大の敵となりますので、せっかくのありがたいお申し出をお断りせざるをえない場合もありますこと、あらかじめ心置きください。ゴキブリの生命力をもった蝶が生まれ出たとき、またみなさんと再会できる日を本当に楽しみにしています。それまで、お互いに毎日を大切にして生きてゆきましょう。あらためて皆さまのご支援に感謝しつつ、ご健康とご活躍をお祈り申し上げます。

保苅実

追伸:発病直前に、デボラ・ローズ著『生命の大地―アボリジニ文化とエコロジー』(平凡社)という本を翻訳出版しました。「アボリジニの研究して何の役にたつの?」と聞かれることがよくあります。一般読者むけの読みやすい本ですので、ご興味ある方ご一読いただければ嬉しく存じます。また、発病直後に、ガッサン・ハージ著『ホワイト・ネイション―ネオ・ナショナリズム批判―』(平凡社)という本も友人と共訳で出版しました。こちらは専門書・研究者向けですが、ナショナリズム論、多文化主義などに関心をお持ちの研究者の皆様、とんでもなく刺激的な本ですので、ぜひ。翻訳印税の一部は高額治療費の足しに使い、残りは日本に帰国した時に飲み食いに使うつもりです(笑)。

August 08, 2003 [ Message ]

Mino's update (8/8)

Dear All,

I really have to get ready to fly to Australia (I have 2 1/2 old son to leave here), so unless it is emergency, this will be the last time to contact you until I get back from Australia. I spoke with Linda, who is now taking care of Mino and letting me know what is going on, and I need your understanding and support.

He is on chemotherapy now and there is high risk of infection. His white blood cell count is decreasing so even just a cold could kill him. So, I have to ask you not to visit him and not to send flowers of organic materials for the next few months. Card and telephone are OK for now. But I don't want to overwhelm him, so I will give you just an address to write to him. If you want to speak with him, write down your phone number so that he can call you when it is convienient for him. I really need your understanding on this.

Minoru Hokari
Cancer Council Unit
Unit 9, Number 3 Seaview Street
Fullarton, SA
Australia

However, if I can ask you one thing, here is one. My parents cannot speak English and while they are with Mino, we need someone to be a translator for them for 1 week or 2 weeks at most. We already have someone who offered, but if any of you are willing take this role. please let me know. Also, maybe someone who lives in Sydney can help my parents to put them on the flight to Adelaide. I am not sure how the custom and immigration procedure works in Sydney airport, though. This is just a thought.

There seems not much side effects, which mean a good sign according to the doctors. Our parents are taking over me when I leave and stay until I go back in the middle of September again. Please keep praying with me for him.

Yuki

===================The following part is written in Japanese.===================

親愛なる皆様

私の出発も来週半ばに迫り、2歳半の息子を残していく準備等に追われるので、緊急事態にでもならない限り、これが出発前の最後の交信となります。現在、弟の友人のLindaが彼に付き添ってくれており、向こうでの状況を知らせてくれます。

彼は化学療法で治療中であり(いわゆるキーモ, chemotherapyです)、感染症のリスクが極めて高い状態です。つまり白血球の数が減少し、ちょっとした風邪でも文字通り命取りになるということです。そこで、何人かの方からお見舞いをしたいというお申し出を受けておりますが、感染症のリスクが低くなるまで、これから数ヶ月は病院への見舞いと生花の送付はご遠慮願いたいと思います。しばらくは手紙と電話だけにお願いします。が、あまり多くの方から一度に電話があるのも困りますので、とりあえずは手紙を出していただき、電話でお話したい方は、番号を書いていただければ、弟の都合のいいタイミングで彼の方から電話できるかと思います。ご心配してくださっている皆さんに、こういう制限をかけるのは心苦しいのですが、どうかご理解をお願いします。

Minoru Hokari
Cancer Council Unit
Unit 9, Number 3 Seaview Street
Fullarton, SA
Australia

しかしながら、皆さんにお願いしたいことがあるとすれば、次の二つです。まず、私の両親は英語が話せませんので、彼らの滞在中、1週間か2週間ほど通訳をやってくださる方はいませんでしょうか?既に、お願いできる方は見つかっていますが、もしも他にもやってくださる方がおられましたら、どうかご連絡ください。また、シドニー在住の方で、彼らをシドニーで、アデレード行きの飛行機に乗る手伝いをしてくれる方はいませんか?シドニー空港での税関や入国手続きがどれほど英語能力を要する必要があるのか私にはわからないのですが、その辺りは可能でしょうか。

治療の副作用もあまりないようで、医者はとてもいい兆候だと話しているそうです。私達の両親が、私がオーストラリアを発つ前に、渡豪します。そして、9月半ばに私がまた渡豪するまで滞在する予定です。

姉・由紀

August 06, 2003 [ Message ]

Mino's update (8/6)

Dear Friends,

I have got so many responses from you and thank you very much. Originally there were 300 contacts that I sent the last message, which I had to divide 4 separate mails to send out. I am sorry, but I cannot keep up with replying most of your messages. I will bring everyone's message to him when I go to Australia next week.

On the way to his field work, due to the severe back pain, he went to E.R. in Alice Springs. They don't have a proper equipment to find out what was wrong, so they flew him to Adelaide on the next day. He had a tumor taken out and started his treatment there, but after a while, he plans to move to Melbourne where he has a very good friend to live with. Since we are not sure when he can move, he decided to let you know the address only after he gets settled.

Many friends who were not on the original mailing list also e-mailed me, but I cannot keep track of it. So, please forward this message again to your friends.

He is fighting hard. I heard he is smiling. He has a good spirit. Keep pray for him with me.

Yuki

===================The following part is written in Japanese.===================

親愛なる皆様へ

たくさんの激励のメールを頂き、感謝いたします。もともと、弟に頼まれたメール送付先は300件近くあり、一度では送りきれずに4回に分けて送りました。毎日届くメールに対応が追いつかず、ほとんどの方にお返事差し上げてないこと、大変申し訳ありません。来週、渡豪の際には、頂いたメッセージはすべて本人の手に届けます。

フィールドワークに向かう途中、Alice Springsという町で、背中の痛みが激化し、弟は緊急入院しました。ところが、そこでは何が問題なのかを特定する適切な器械がないということで、翌日、アデレードに飛行機で飛ばされました。そして、腫瘍を摘出、現在治療中です。しかし、治療が一段落したら、弟は一緒に住んでくれる親しい友人のいるメルボルンに移る予定です。ただ、治療のスケジュールと彼の状態次第で、いつになるかが決まるため、実際にメルボルンで住所確定してから、皆さんにご連絡することに決めたのです。

もともとの送付先に含まれていなかった方からも、お友達経由で、私にメールをくれたのですが、それらのアドレスを補充する時間も余裕もありません。申し訳ありませんが、このメールもまた転送していただけると助かります。

彼は必死に病気と闘っています。笑顔もみせていると聞きました。彼の精神は元気です。どうか私と一緒に祈り続けてください。

姉・由紀

August 04, 2003 [ Message ]

This is Mino's sister, Yuki.

Dear Mino's friends,

I am Yuki, Mino's sister. As you all have received a mail "Message from Mino (English/Japanese)" recently, Mino asked me to send that mail to all of you. I accessed to his hotmail account and found the problem in sending all of you at once in one day, so I decided to send it from my own account. I will attach the original message again to this mail. I already have received encouragements and thoughts from some of you and I really appreciate that. I will visit him 8/14 to 8/25 and will bring your message to him. He is my dearest brother and I have a strong faith in him to overcome this sickness and recover as soon as possible. Please pray for him with me. Best regards,

Yuki

== Mino's message ==

Hi, everyone,

I am sending this mail to every address I've got in my account. Please excuse me if you have not heard from me for years. Since I cannot access to the Internet right now, I asked my sister to send this to all of you.

It is unfortunate to tell you that I was diagnosed as Lymphoma. I am going to focus on my treatment from now on and my apology for canceling most of my near future schedule which may affect your plan as well.

I had a serious back pain and hospitalized, then soon doctors found a tumor in my spine and had an urgent operation. Last few weeks were truly dramatic, but it was not too bad as a life experience.

I am now experiencing rapidly reconciliation between body and mind, as well as quiet and deep exploration of myself. Such experiences are so precious and amazing that I am far from miserable. Furthermore, it is such a gift to be totally free from social obligations and doing what I really want to do (listening to good music, reading quality books, exploring inner self, etc.).

However, I understand some of you may urgently need to contact me for publication or administrative purpose. I am especially keen not to delay publishing procedures of which I have already submitted manuscripts. Please contact my sister in the U.S. who can handle English. She will let me know your message and I will try to settle things out as soon as possible. Just remind you that I am not able to respond to your e-mail because I don't have an access to the Internet right now. I am very sorry for this inconvenience.

Since my last 10 years was truly amazing and wonderful, the possible worst scenario does not bother me much. It could have been much more difficult for me to accept his sickness if it had happened 10 years ago. I am lucky. But anyway, I am planning to survive at least 20 more years! So, I hope to see you when I get back on the normal social life. Until then, take care of yourself!

Lots of love,
Mino (Minoru Hokari)

===================The following part is written in Japanese.===================

最愛なる弟、実のお友達の皆さんへ

私は、実の姉で由紀といいます。ここ数日、英語と日本語で"Message from Mino"というメールが届いたかと思います。メールにもありましたように、弟に頼まれて私が彼のhotmailのアカウントから送信したのですが、一日に送れるメール数と一つのメールで送れるあて先数が限られていたため、時間がかかってしまい、私のアドレスから直接お送りした方も多いかと思います。念のため、このメールにもオリジナルの彼のメッセージを添付するのでご確認ください。メールを送信してから、いくつもの激励のメールを頂き、感謝しています。 8/14から25まで、私は渡豪しますので、頂いたメッセージは本人に届けさせていただきます。彼は私の本当に大事な大事な弟であり、この病気に打ち勝って早く回復することを私は強く信じています。由紀

== 実のメッセージ ==

皆さん、お元気ですか。オーストラリアから保苅です。このメールは、姉に代筆してもらい、僕が持っているすべてのメールアドレスに一括送付しますので、何年もご連絡していない方にも届くと思いますが、どうかお許しください。

突然ですが、悪性リンパ腫(Lymphoma、リンパ球の癌)との診断を受けました。しばらく治療に専念します。ご迷惑をおかけする方もいらっしゃると思いますが、「癌ならしょうがないな。」とお許しいただければ幸いです。

リンパ腫というのは、癌の中では比較的治療可能なものらしいですが、貴重な時間を癌の勉強などに使いたくないので、具体的なことは医者任せにしています。背痛が悪化して歩行が困難になり、緊急入院、腫瘍が発見されて、緊急手術と一命を取り留める大変な数週間を過ごしましたが、それはそれで有意義で興味深い体験でした。

精神と身体の急速な和解、静かで深い内省、そして、ベッドに横になりながら身体に染み渡るように音楽を聴いていると、今まで経験できなかった生命の厚みを感じます。入院生活は退屈しません。社会的義務の一切から堂々と解放される自由をこんなふうに獲得できるとは、思ってもみませんでした。奇妙といえば奇妙ですが、不思議と充実した毎日を過ごしています。新しい発見の連続です。

とはいえ、このメールを受けとられた方の中には、出版や事務手続きなどで、僕に緊急に連絡を取る必要のある方もいらっしゃると存じます。「癌なんだからほっといてよ。」とわがままばかりも言えません。その際は、下記にご連絡いただければ幸いです。特に、既に提出させていただいた原稿に関しては、できるだけ滞りなく活字になることを希望していますので、前向きにご検討いただけると幸いです。尚、僕が自力で電子メールをチェックできるようになるには、もうしばらくかかりますので、このアドレスに返送されても、すぐのお返事はできません。ごめんなさい。

日本語関係の緊急連絡先(実家)英語関係の緊急連絡先(姉、由紀)

まぁ、どうなるかわかりませんが、ここ10年本当にやりたいことを生き生きとやってきたので、最悪の場合でもまぁいいやと思っています。10年前にこの診断を受けたら、僕はもう少し狼狽していたかもしれません。とはいえ、しぶとくあと20年くらいは生き延びるつもりでいますので、社会復帰の際にはまたお会いできれば幸いです。そのときまで、皆さんもお体には十分お気をつけて!

保苅 実